これは、手使海ユトロが、東京世田谷の多摩美術大学から発せられた“COOLSHARE(クール・シェア)”の運動に賛同して、作り出し、提供した音楽だ。多摩美術大学デザイン学科、堀内チームが提唱し、発信しているCOOL SHAREは、東日本大震災（2011年）によって引き起こされた電力の供給問題への一案で、環境省が提案しているCOOL BIZ及びSUPER COOLBIZとも連動した“危機ムーヴメント”だ。美術／デザインの立場から、先ずは、個人で使う冷房をひかえ、図書館等の公共建物の冷房を集まった皆で共有して使う、更に、賛同してくれるレストランやカフェ等の商業施設の冷房を共有する、といった基本的節電に始まり、究極、視覚に冷気や清涼感を訴え得るデザインをも生み出すムーヴメントの提示である。そのCOOL SHAREの中から、音楽にもそれができるだろう、という賛同意志で登場したのが、この『月虹〜Moonbow』なのである。「霧海篪抄〜Mukaiji-sho」が注目曲。手使海ユトロが、2011年に結成したインストゥルメンタル・ユニット夢虹華紋のメンバーであり、ライヴ・パフォーマンスでも共演機会の多い尺八奏者、三橋貴風（Mitsuhashi Kifu）とのスリリングで壮大な伝承曲編曲版だ。　大伴良則